PhD 出願

いつ PhD に出願するか?という悩み【今!ではないかもしれない】

PhD出願のタイミングに悩む人は多いと思います。

「学部4年のうちに出すべき?」「修士に行ってからの方がいい?」「1年遅らせた方がいい?」──私もかつて同じ悩みを抱えていました。

結論から言うと、焦って出すより、修士課程をしっかり終えてから出願する方が圧倒的に有利です。

この記事では、なぜ早すぎる出願がリスクになるのか、そして修士を終えてから出願することのメリットを、実体験を交えながら解説します。

悩んでいる人

PhD 留学すると決めたよ!
次の年にすぐにでも出願するよ!!

ちょっと待って!
遅らせた方が合格率が高まる場合もあるんだ。

管理人

この記事では、いつ PhD 出願するかに絞って解説をします。

PhD 出願に必要な書類や、それに要する準備に関しての知識は前提としますので、この記事を読む前にぜひ下記の記事を参照してください

あわせてどうぞ!

PhD出願のタイミングで迷う人が多い理由

もし今修士の方は、周りから「今年留学する?」と探られるように聞かれることでしょう。

また、今経済学部に在籍していて、国内大学院進学を視野に入れていると、「その先の進路はどうなるか?」ということについて嫌でも考えると思います。

PhD 留学するのかしないのか、そしてするならいつ出願するのか、というのは実は SNS が普及する前から全経済学徒共通の、永遠の課題なのです。

学部4年や修士1年で焦る心理

国内一部の大学の経済学部では、「学部・修士一貫コース」や「卓越コース」のようなものが設けられていたりします。

そこに採用された同期や友人たちを見ていると、「自分も早く結果を出さなきゃ」「早く卒業しなきゃ」「早く出願しなきゃ」と焦ってしまうのは当然のことです。

結果として、学部4年や修士1年のうちに出願して成果を出さなきゃ…!と焦ってしまうのです。

「早く出さなきゃチャンスを逃す」と思ってしまう背景

そうでなくても、たとえば修士2年で出願するか、その後の博士1年で出願するのか迷うケースもあります。

この場合、「早ければ早い方がいいのだろうか」「同分野のライバルの⚪︎⚪︎君は今年出願しないようだ。じゃあ今のうちに出願したほうがいいのだろうか。」と焦ってしまうわけです。

でも実際は、1〜2年遅らせてもキャリア的には全く問題なし

このように焦る気持ちはよくわかります。

ですが、多くの場合、出願を1,2年遅らせて、早くても修士2年、あるいは博士1年で出願しても全く問題ありません - むしろプラスになることの方が多いのです。

ここからは(1)なぜ早すぎる出願はオススメできないのか、そして(2)いつ出願するのがベストかについて解説していきます。

なぜ“早すぎる出願”はおすすめできないのか

PhD出願では「どれだけ自分の研究テーマが明確か」「なぜこの分野に進むのか」が問われます。(注:PhD進学後に分野・テーマともに変えることはできます)

つまり、単に成績やスコアが高いだけではなく(それは大前提)、研究者としての方向性が重要視されるのです。

実際、PhD出願は難しくなっており、論文 (Writing sample) が判断材料として読まれるようになってきています。

だからこそ、学部生や修士1年の段階で焦って出願してしまうと、その後アピールできたかもしれない “研究者としての深み” が十分に出せないケースが多いのです。

研究テーマや分野の方向性がまだ固まっていない

PhDでは「あなたは何を研究したいのか?」がすべての出発点になります。

しかし、学部や修士前半の段階では、授業や論文を通してまだ分野を探索している時期です。

興味のあるテーマはいくつかあっても、自分の問いを定義できる段階には達していないことが多いです。

その状態でSOP(志望動機書)を書こうとすると、どうしても「この分野に興味がある」「こういう内容を学びたい」という内容(パッシブ)に終始してしまい、研究者としての実績(こちらはアクティブ/生産的)を示すのが難しくなります。

研究テーマが定まっていれば、出願時に「なぜこの分野を選び、この大学なのか」を具体的に語れるようになります。その成熟さが、合否を大きく左右します。

推薦状で深みを出せず、評価が浅くなる

出願書類の中で特に重視されるのが、推薦状(Letter of Recommendation)とSOPです。

ただし、学部や修士1年で出願すると、教授との関わりが浅く、推薦状が「授業で優秀だった学生」というだけの表面的な内容になりがちです。

一方、修士課程で論文やリサーチアシスタント (RA) の経験を積んでから出願すれば、推薦者は「研究の進め方」「分析力」「問題設定のセンス」など、研究者としての具体的資質を書いてくれます。

これが審査側にとって非常に強い印象を与えます。

RA経験・推薦者との関係性・論文執筆経験の不足で競争力が下がる

PhD出願の評価では、GPAやTOEFLなど以上に「研究のポテンシャル」が重視されます。
そのため、研究の経験があるかどうかが大きな差になります。

修士課程を経て論文を書いたり、RAとしてデータ分析・モデル推定を経験したりしていると、出願書類全体に「実際に研究を動かしたことがある人」という信頼感が出ます。

逆に、経験が浅いまま出すと、審査官は「まだトレーニング段階の学生」と判断してしまう可能性があります。

SOPでも同様です。研究経験があると、「具体的なリサーチクエスチョン」と「なぜそれが重要か」を自分の言葉で書けます。

早い段階での出願ではそれが抽象的になり、「知識を深めたい」という表現ばかりが並んでしまう傾向があります。

特に経済学のPhDでは、修士論文が研究への本気度を示す重要な証拠になります。それがあるだけで、SOPの説得力も一気に増します。

ポイント

早すぎる出願は、“能力が足りない”からではなく、“成熟の機会を活かしきれていない”から不利になる。
修士を終える頃には、研究テーマ・SOP・推薦状の三位一体が整い、出願の説得力が劇的に変わる。

修士課程を経て出願するメリット

それでは、修士課程を経ることで出願ポートフォリオが高まる可能性について解説します。

研究テーマが明確になり、SOPに一貫性が出る

これは言わずもがなですね。

実際に SOP を書き始めるとわかりますが、

意外と書く内容がなくて困る

のです。特に研究が仕上がってない場合は。

一方で修士課程を終えている場合(あるいは修士論文がほぼ仕上がった状態で出願する場合)は、研究テーマをはっきりと言語化できるので、SOP をスラスラと書けます。

その結果、SOP の質が上がります。

推薦状で「研究実績」が書いてもらえる

また、出願してみるとわかりますが、教授に推薦状を依頼して書いてくださることになった場合、「SOP 送って」と言われます。

これは教授が書く推薦状の内容と SOP の内容に相違がないようにするためです。

ここからわかることは、研究をしっかり仕上げておくと、SOP の質も上がるし、SOP を基に書いていただく推薦状の説得力も増すというように、メリットがたくさんなのです。

上述の点と関連しますが、

SOP の質が上がる→推薦者が出願者の SOP を読んで推薦状を書く→推薦者も強く推せる

という正のフィードバックがあります。

修士論文がポートフォリオとして強力な武器になる:pubも狙える

もちろん、研究が進んでいると SOP や推薦状だけでなく、Writing Sample にも直接効いてきます。

質の高い修士論文を Writing Sample として添付できるわけですからね。

また、修士論文を学会で発表できたり、ジャーナルに投稿できたりしていると、それらを CV にも盛り込めてアピールできるのです。

さらに、学会発表の経験やジャーナルへの投稿(さらには掲載)は、当然教授も高く評価してくださり、強く推薦してくださります。もちろん SOP でもそれらをアピールできます。

よって、研究を十分深めてから出願することは、SOP、推薦状、Writing Sample、CV とほとんど全てに効いてくるのです。強い正フィードバックが働きます。

修士を終えてからの方が見える景色が確実に違います。

出願を遅らせることへの不安にどう向き合うか

ここでは、出願を遅らせた場合に生じうる不安について、2つの軸で見ていきます。結論、どちらも心配するだけ無駄というものです。

「同期より遅れるのでは?」という心配

ありとあらゆる不幸は、他人との比較によって生まれる。

と、昔の偉い人は言いました。

どんどん先に進んでいる同期がいたとしても、気にする必要はありません。

あなたはあなたのペースで進んでいけばいいのです。

それに、日本の大学内でどっちが先に留学するか?というセコセコした競争は、国外に出たら無意味になります。

唯一の懸念としては、同じ分野でものすごい優秀な人(ライバル)がいたら、その人と出願時期をずらすのも良いかもしれません。

しかしその場合、次の代に同じ分野の別のすごい人が出願を始める可能性もありますが…

この辺は若干考えても仕方のない部分ではあります(運もあるので)。なんとなく前後の世代の人を見て、留学時期を調整するのはアリではあります。

「強力な後輩ライバルが現れるのでは?」という心配

これも他人との比較という不幸の種です。

まあ、いつかは自分よりすごい人は必ず生まれます。特に国外に出れば。

それは当たり前のことなので、受け入れるしかありません。

自分が教授になったとしても、自分よりすごい生徒は必ず現れます。

まとめ

PhD出願は、早さよりも“準備の深さ”がものを言う世界です。本当です

学部生や修士1年で焦って出すより、修士論文を書ききって研究テーマを磨いてから出願する方が、確実に成果につながります。

焦らず、自分自身を育てる時間もPhD準備の一部なのです。

「遅い」と感じる1年は、あなたの研究者としての基礎を築く貴重な時間。

迷ったら、焦らず「今の自分を育てる」選択をすることをおすすめします。

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