計量経済学において、Extremum Estimator の「一致性(Consistency)」を証明する際、避けて通れないのが Identifiable Uniqueness という概念です 。
通常の「解の一意性」が単に「最小値(または最大値)が一つであること」を指すのに対し、Identifiable Uniqueness はより強い性質を指します。
この Identifiable Uniqueness についてこの記事で理解を深めていきましょう。
Contents
Identifiable Uniqueness とは?
まずは Identifiable Uniqueness について確認します。
以下の条件を、Identifiable Uniqueness といいます。
条件 (ID)
\[ \forall \varepsilon>0 \quad \inf_{\theta\not\in B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)} Q \left( \theta \right) > Q \left( \theta_{0} \right) \]
なお、\( B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right) \) は真のパラメーター \( \theta_{0} \) を中心とした半径 \( \varepsilon \) の球で、パラメーター空間 \( \Theta \) の部分集合です。
\( \Theta \) はユークリッド空間の部分集合です。
Extremum Estimator 一般の説明や、目的関数 \( Q \) についてなどは、こちらの記事をご覧ください。
十分条件
Identifiable Uniquenessを成立させるための、3つの十分条件を以下に示します。
条件1:コンパクト性
まず、パラメーター空間 \( \Theta \) のコンパクト性(以降 COMP)です。
条件 (COMP)
\( \Theta \) はコンパクトである。
なお、ここではパラメーター空間 \( \Theta \) はユークリッド空間の部分空間なので、\( \Theta \) は有界かつ閉であることと同値です。
条件2:連続性
次に、Population の目的関数 \( Q (\cdot) \) が連続であることに関する条件(以降 CQ, Continuity of Q)です。
条件 (CQ)
\( Q \) は連続である。
条件3:唯一性
そして、Population の目的関数 \( Q (\cdot) \) の最小値が一意であることに関する条件(以降 UM, Uniqueness of Minimizer)です。
条件 (UM)
\( Q \) の最小解はただ一つである。(それを \( \theta^{*} \) とする)
証明
上の3つの条件 (COMP), (CQ), (UM) の下では、Identifiable Uniqueness が成り立ちます。
定理 (ID の十分性)
条件 (COMP), (CQ), (UM) を仮定する。このとき、(ID) すなわち
\[ \forall \varepsilon>0 \quad \inf_{\theta\not\in B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)} Q \left( \theta \right) > Q \left( \theta_{0} \right) \]
が成り立つ。
では、これら3つの条件の下、Identifiable Uniqueness が成り立つことを示していきます。
証明の流れは以下です。
- 任意に \( \varepsilon > 0 \) をとって固定します。
- 条件 (COMP) および \( B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right) \) が開球であることから、\( \Theta \cap B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)^{c} \) はコンパクトです。
- 条件 (CQ) と \( \Theta \cap B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)^{c} \) のコンパクト性から、Weierstrass の定理より、\( Q \) は \( \Theta \cap B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)^{c} \) 上に最小解を持ちます。それを \( \theta^{*} \) とおきます。
- \( \theta^{*} \in B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)^{c} \) ですから、\( \theta^{*} \) は \( \theta_{0} \) の近傍にありません。ということは \( \theta^{*} \ne \theta_{0} \) です。
- 条件 (UM) より \( Q \) の最小解 \( \theta_{0} \) は一意でしたから、\( \inf_{\theta\not\in B\left( \theta_{0}, \varepsilon \right)} Q \left( \theta \right) = Q \left( \theta^{*} \right) > Q \left( \theta_{0} \right) \) が成り立ちます。
なお、2. では「コンパクト集合の閉部分集合はコンパクト」という事実を使っています。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
まとめ案:一致性の鍵を握る「理論的保証」
Identifiable Uniqueness は、極値推定量の理論的妥当性を支える重要な条件です。今回の内容を整理すると、以下の3点が重要になります。
- 3つの十分条件: パラメータ空間がコンパクトであり 、目的関数が連続で 、かつ最小解がただ一つであれば、Identifiable Uniqueness が導かれます 。

